借地権を相続したら|地主との関係を円満に保つポイント

借地権を相続したら知りたい地主との関係を円満に保つ基礎知識とポイント

借地権相続では、「相続手続きが終われば一安心」とはなりません。
実際には、その後の地主とのやり取りが、借地権を資産として守れるかどうかを左右します。

借地権のことを十分に知らないまま相続したり、地代の支払いは親が一人でしていたのでそもそも借地権であることを知らなかった、という方も多いんです。

本記事では、借地権の基礎知識をおさえつつ、借地権相続における地主交渉のリスクを落ち着いた視点で整理し、実務の現場で大樹不動産がどのように判断をサポートしているのかを解説します。

この記事のまとめ

借地権相続における地主対応は、法律の知識だけで判断できるものではありません。
相続することに地主の承諾は不要ですが、相続したタイミングで交渉の流れが決まり、その後の更新や売却、建替えに影響することもあります。

特に、初動対応が、その後の判断に影響することがあります
自分で動く前に、状況を整理できる専門家に相談することが、結果的に負担を減らす近道になります。

本記事の目次

  • 借地権についての基本を整理
  • 借地権相続で生じやすい交渉論点
  • 地主さんとのやりとりQ&A
  • 相続通知時の注意点
  • 専門性の違いが判断を左右する
  • 想定外の条件提示への考え方
  • 地主と良好な関係を築くには
  • 早めの相談がおすすめです

借地権についての基本を整理

借地権における地主と借地人の関係を示した図解

借地権とは、建物の所有を目的として、他人の土地を借りることができる権利をいいます。
土地は地主が所有したまま、借地人はその土地の上に建物を建て、使用・収益することができます。

一戸建て住宅やアパートなどで、「土地は借りているが、建物は自分のもの」という形になっている場合、
多くがこの借地権にあたります。

弊社にご相談いただく借地権のほとんどは旧法借地権という昔から続いている借地契約です。借地人が非常に手厚く守られており、長い期間土地を使用することができます。

借地権は、相続の対象となる財産であり、相続が発生すると原則として相続人がそのまま引き継ぎます。
また、単なる使用権ではなく、金銭的な価値を持つ財産として扱われる点も重要です。

実際に、相続税の申告や借地権の売却、地主との交渉の場面では、
借地権の価格や評価が重要な判断材料になります。
その評価は、土地の立地や契約内容、残存期間などによって異なり、
相続税評価、売却時の市場価値、交渉上の評価など、目的によって見方が変わる点にも注意が必要です。
借地権相続では、まず「価値がある財産である」という点を理解することが大切です。

借地権相続で起きる交渉論点

借地権相続における地主交渉では、法律上の整理と実務上の慣行が必ずしも一致しません。
このズレが、相続人にとって分かりにくく、判断を難しくしています。

交渉論点 具体的な内容 法的位置づけ 実務上の注意点
借地返還 地主から「土地を返還してほしい」と提案される 借地人に返還義務はない まずは借地権の価値を理解してから判断することが大切です
名義書換料 相続による名義変更に伴い、地主から金銭を請求される 契約書に記載がなければ法的義務なし 慣習や今後の関係性を考慮。相場は借地権価格の10%前後
地代の見直し 相続を機に地代の増額を求められる 相続自体は地代改定事由ではない 周辺相場や過去の経緯を確認。急いで同意しない
更新料の提示 次回更新時の更新料について事前に提示される 契約内容や慣行による 金額の妥当性を専門家に確認することが重要
条件変更の要求 建替え制限や用途制限など、新たな条件を求められる 既存契約の変更には双方の合意が必要 安易に承諾せず、将来の利用計画を考慮して判断

借地返還を持ちかけられるケース

相続をきっかけに、
「今後の管理を考えると返したほうが負担が少ないのでは」 「借りている土地だから返そう」といった形で、借地返還を考える方もいらっしゃいます。
これは借地権の価値を知らない方、相続時に住む家があり、相続した建物を使う予定がない場合に多いです。

「借地なので返還してほしい」と地主から提案されることもあります。
まずは借地権の価値や選択肢を確認してから、落ち着いて判断することをおすすめします。

借地権の価値が高い立地では、地主側が借地の返還や買戻しを検討する背景には、
長年、比較的低い地代で貸し続けてきた事情や、将来の土地活用・相続を見据えている場合もあります。
必ずしも借地人に不利な意図があるとは限らず、
双方の立場や将来像が異なることで、話し合いの方向性にズレが生じるケースも少なくありません。

借地権の返還は、建物の老朽化が進んでいる場合や、相続人全員に利用の予定がなく、維持管理が難しい場合など、
他に現実的な方法が見当たらないときの最終的な選択肢と考えるのが良いでしょう。
大樹不動産では、感情的な対立を避けながら、借地人・地主双方にとって無理のない着地点を探ることを重視しています。

名義書換料や条件見直しの話

相続をきっかけに、名義書換料や地代・更新料など条件の見直しが提示されることもあります。
これも名義書換料は契約書に明記がなければ、法的に支払う義務はありません。とは言え、将来的な関係性を考えると、支払いを断ったり、地代の値上げに応じないというのはベストな方法ではありませんので、慎重に対応してください。

地主の承諾が必要になる場面

原則として法定相続人が承継する場合、地主の承諾は不要とされています。
ただし、相続をきっかけに行う行為の内容によっては、地主の承諾が必要になる場面があります。

地主の承諾が必要になるケースはこのようなときです。

  1. 法定相続人以外の人が借地権を取得する場合(遺贈など)
  2. 借地権の売却を検討している場合
  3. 建て替えや増改築を検討している場合

例えば、遺言によって法定相続人以外の人が借地権を取得する(遺贈いぞう)場合は、
相続ではなく「譲渡」に近い扱いとなり、地主の承諾が必要になります。

また、相続後に借地権の売却を検討する場合や、建物の建て替え・増改築を行う場合も、
契約内容や地域の慣習によっては、事前に地主との協議や承諾が求められます。

ケース 地主の承諾 根拠・理由 実務上のポイント
法定相続人への相続 不要 相続は包括承継のため譲渡にあたらない 地主への通知は礼儀として行うのが一般的
法定相続人以外への遺贈 必要 遺贈は譲渡と同様の扱い 遺言執行前に地主との協議が必要
相続後の借地権売却 必要 借地権の譲渡にあたる 地主の承諾なしでは売却不可。承諾料が発生することも
建物の建替え 原則必要 旧法借地権では地主承諾が原則 承諾が得られない場合は裁判所の許可申立ても可能
建物の増改築 契約による 契約書に制限条項がある場合が多い 規模が小さい修繕でも事前相談が無難
建物の用途変更 契約による 住宅→店舗など大幅な変更は要承諾 契約書で「居住用」と明記されている場合は特に注意
相続登記・名義変更 不要 相続による権利移転のため ただし地主への通知と協力関係構築は重要

判断に迷ったら専門家に相談を

表はあくまで一般的な目安です。実際には契約書の内容、地域の慣習、過去の経緯などによって判断が変わることがあります。
特に「原則必要」や「契約による」となっているケースでは、 地主との関係を良好に保ちつつ、適切な手続きを進められるよう、借地権に精通した専門家に相談することをおすすめしています。

地主さんとのやりとりQ&A

よくあるQ&A

借地権相続では、「何から手をつければいいのか分からない」という声を多く耳にします。
ここでは、実務の現場でよくある疑問をQ&A形式で整理します。

地主に連絡する前に、まず何を整理すべきですか?

まず、誰が借地権を引き継ぐのかを確定し、借地契約書の内容を確認しておくことが大切です。
契約書には、名義変更の取り扱いや、名義変更料(承諾料)に関する記載がある場合もあります。

また、過去の更新や名義変更がどのように扱われてきたか、
地代の支払い状況なども整理しておくことで、落ち着いて話を進めやすくなります。

相続人が複数いる場合、誰が地主と話すべきですか?

相続人が複数いる場合は、地主との窓口を一人にまとめることが望ましいといえます。
複数人がそれぞれ連絡を取ってしまうと、話が食い違い、不要な混乱を招くことがあります。

誰が借地権を引き継ぐのか、誰が窓口になるのかを事前に整理しておくことが、
平和に話を進めるための前提となります。

名義変更は、地主への通知より先に行うべきですか?

名義変更そのものを先に進めるのではなく、
地主へ連絡する前に「名義変更に関する準備」を整えておくことが重要です。

準備が整ったうえで、相続が発生した事実と、
誰が借地権を引き継ぐ予定であるかを地主に通知し、
その後、状況に応じて名義変更の手続きを進めていく流れが一般的です。

地主への相続通知では、どこまで話す必要がありますか?

相続の通知は、条件交渉の場ではありません。
この段階では、相続が発生したことと、借地権を引き継ぐ予定者を伝えるにとどめ、
名義変更料や今後の条件については、改めて整理してから話すのが無難です。

事実関係の共有にとどめることで、感情的な行き違いを避けやすくなります。

名義変更を整理することは、地主との対立につながりませんか?

名義変更を先に整理することは、地主と対立するためではありません。
むしろ、事実関係を整えたうえで話をすることで、
今後の選択肢を双方にとって無理のない形で検討しやすくなります。

相続後の初動対応を丁寧に行うことが、
結果として平和的な解決につながるケースは少なくありません。

名義変更料(承諾料)は必ず支払わなければならないのでしょうか?

相続による借地権の名義変更については、
法律上、必ず名義変更料(承諾料)を支払わなければならないと定められているわけではありません。

ただし、借地契約書に名義変更料についての記載がある場合や、
過去の更新や名義変更の際に一定の取り扱いがされてきた場合には、
その内容や経緯を踏まえた対応が求められることもあります。

大切なのは、その場で結論を急がず、 契約内容や状況を整理したうえで、
今後の関係性も見据しながら判断することです。
名義変更料についても、ケースごとに考え方が異なるため、
一度立ち止まって整理することが、平和的な解決につながりやすくなります。

相続通知時の注意点

相続人と地主のやりとり注意点

口頭説明だけで安心してしまう

「今まで通りで問題ありませんよ」と言われ、その言葉を信じて特に書面を残さなかった結果、
数年後に地主が代替わりし、条件の見直しを求められるケースがあります。

当時は悪意がなくても、記録が残っていなければ、後から状況が変わることは珍しくありません。

正論のみで進めてしまうと

例えば、極端な例ですが・・・名義書換料を求められた際に、
「相続なので法律上、支払う必要はありませんよね」 と正面から伝えた結果、地主が感情的になり、

「そこまで言われるなら、今後の更新については改めて考えましょう」

と話が硬直してしまったら困りますね。
法律上の主張が間違っていなくても、実務ではその後の関係性が影響する場面があるのが借地権相続の難しさです。

専門性の違いが判断を左右する

不動産会社であっても、借地権相続を日常的に扱っている会社は多くありません。
一般的な売買や相続相談と、借地権相続では求められる知識と経験が異なります。

借地権は一般的な不動産と異なる

借地権相続では、
・地主との関係性
・過去の経緯
・地域ごとの慣習
といった要素が判断に影響します。

一般的な不動産取引の知識だけでは、適切な判断が難しい場面もあります。

地主さんと良好な関係を築くには

借地権相続では、法律上の権利を主張することも大切ですが、
それ以上に、地主との関係性を維持することが長期的な安心につながります。

感情的な対立を避ける姿勢

相続という大きな出来事の中で、つい感情的になってしまうこともあるかもしれません。
しかし、地主も人です。高圧的な態度や、法律を盾にした主張は、
その後の更新や建替えの際に影響することがあります。
丁寧なコミュニケーションを心がけることで、お互いに無理のない着地点を見つけやすくなります。

書面での記録を残す習慣

「今回は特別に」「今まで通りで大丈夫ですよ」といった口頭でのやり取りは、
その場では安心できても、数年後に地主が代替わりすると状況が変わることがあります。
合意した内容は、簡単なものでも書面に残しておくことが、
将来のトラブルを防ぐ最も確実な方法です。

相談できる窓口を持つこと

借地権相続は、一般的な不動産取引とは異なる専門知識が必要な分野です。
地主から提示された条件が妥当なのか、どのように返答すればよいのか、
判断に迷ったときに相談できる窓口を持っておくことが大切です。
借地権を専門に扱う不動産会社や、実務に詳しい専門家に早めに相談することで、
選択肢を整理しやすくなります。

急がず一度持ち帰る

地主との話し合いの場では、その場で即答を求められることもあるかもしれません。
しかし、相続直後は気持ちの整理がつかない中での判断になりがちです。
「一度持ち帰らせてください」と伝え、冷静に考える時間を取ることは、
決して失礼なことではありません。
落ち着いて状況を整理してから返答することが、結果として良好な関係につながります。

想定外の条件提示への考え方

想定外の条件提示への考え方

借地返還を前提に話が出たとき

借地返還の話が出た場合は、その場で結論を出さず、一度持ち帰って専門家に相談することをおすすめします。まずは借地権の価値や他の選択肢を確認してから、落ち着いて判断することが大切です。

条件や費用の話が出たとき

地代や費用、条件の見直しについては、
相場や過去の経緯を整理したうえで判断する必要があります。

相場感は専門的な知識が必要な部分なので、その場での即答は避け、専門家に確認してから返答することで、適切な判断ができます。

早めの相談がおすすめです

大樹不動産へ早めの相談を!

近年は、相続や不動産に関する情報が書籍やインターネットで数多く発信されています。ご自身で調べる方も多いでしょう。
一方で、借地権は一般的にはあまり知られていない分野でもあるので、「自分のケースはどれに当てはまるのか」「この判断を進めてしまって、後で問題にならないか」
といった疑問を、ご自身だけで整理することは簡単ではありません。

こうしたとき、実務に精通した専門家に直接相談できれば、
長く悩んでいた疑問が整理され、次に取るべき行動が見えてくることも多いものです。

相続が発生すると、葬儀の手配や役所・金融機関での手続きなど、気持ちが落ち着かない中で対応しなければならないことが続きます。
そのような状況の中で、少しでも判断の負担が軽くなり、落ち着いて次の一歩を考えていただけたらと願っております。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

お読みいただきありがとうございます

最終更新日:2026年1月7日


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